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何色にも、染まらない ~It doesn't dye even to the color. ~

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何色にも、染まらない 最新版原稿

■ S U M M E R ■

☆1章 青空と黒髪の少女


仕事が落ち着いて…初夏の最初のつぶやきはこうだった。
「新しい風景を見に行こうと思う…なう」

思い立ったのはつい先週。
それほど使う機会がない貯金を最新のスマートフォンにチェンジしたことが原因。
なんだか他の人みたいに色んな写真を使って…つぶやいてみたかった。
ただそれだけだった。

★(列車から見える風景の風景写真1:都会風味)
季節は夏。
セミたちのアンサンブルがBGMで鳴り響く。
「外は暑いし…とりあえず電車に乗ってみる…なう」
そんな感じで適当に列車に乗りついでみる。

いつもの通勤風景…友達が住んでいる駅の風景…
そんな景色が徐々に見たこと無い景色に変わっていく。
やがて、コンクリートジャングルの景色はは田園風景へと変化した。
さっそくスマートフォンのカメラを起動して…パシャリッ!

「田園風景だよー!…なう」
なんてつぶやいてみる。

最初は田園風景が綺麗で、珍しくて…ガンガンつぶやいてみる。
パシャッ!
「なんか珍しい鳥がいるー!…なう」
……
パシャッ!
「なんか山がたくさんー!」
「なう付け忘れてた~!……なう」

★(列車から見える風景の風景写真2:田舎風味)
そんな感じで写真つぶやきを続けていたら…
いつのまにか民家が少しあるだけの田舎風景になった。
数年間におよぶ都会暮らしの影響で…まるで違う国に来たようだった。

「次の駅で降りてみる…なう」
こうして、小さな駅に降り立った。
名前も知らない駅。
見たことも無い風景。
知る人が一人もいない世界。

「ちょっとした冒険…なう」
なんて、ちょっと浮かれてみる。

浮かれついでに、写真つぶやきを連発してみる。

パシャッ!
「さっそく駅前を見回してみる…バス停がある…なう」
パシャッ!
「自動販売機は特に違いは無さそう…なう」
パシャッ!
「あっちのほうにバス停があ…」

[??]わぁああっ!」
という悲鳴が聞こえた。
反射的に振り向く。

★(駅前に佇む少女(果物の描写は無くてもOK))

悲鳴が聞こえた方向には目の前の光景に呆然とした少女が立っていた。
そして、完全に沈黙した少女の目の先にはたくさんの果物が転がっている。
少女の手には破けたビニール袋。
どうやら、ビニール袋に詰め過ぎて破けてしまったようだ。

[自分]あの…大丈夫?

屈みながら話しかけると、その少女はやっと状況が把握できたのか

[少女]拾わないと…
慌てて自分が落としてしまった果物を拾い始める少女。
かなり広範囲に散らばってしまった果物を集めて、僕は少女に渡そうとする。
が、少女の腕の中にもたくさんの果物。受け取ってもらうのは難しそうだ。

[自分]えっと…代わりの袋とか…持ってる?
[少女]……(ふるふる)

首を横に振っている。
どうやら、スペアは持っていないらしい。

[自分]じゃあ、代わりになるようなものは…
[少女]……(ふるふる)
[自分]あはは…だよね…
手ぶらで買い物に来た少女の様子を見れば…納得だ。

[自分]じゃあ、届けてあげる
[少女]……(かくん?)

少女は首を横に傾ける
私は笑顔でもう一度説明する。

[自分]キミの家まで届けてあげるってことだよ
[少女]……

今度は微動だにしない。ちょっと迷っているみたいだ。
表情はほとんど変わらないような気がするけど…目でそう言ってるみたいだ。

[自分]えと、別に迷惑でもなんでもないから
[少女]……あの…バスで移動しないといけないくらい遠いので…
[自分]別にいいよ~、これも何かの縁だと思ってさ?気にしないでよ
[少女]……ありがとう…ございます
[自分]どういたしまして~。 私の名前は水谷鈴夏だよ。よろしくね?
[少女]えっと……その……私の名前は…緑川黒子です。
[鈴夏]うん、よろしくね…クロちゃん♪
[少女]はい……よろしくお願いします

★黒へフェードアウト(白でもいいかも…)
その少女の表情が「困った、どうしよう」から「うれしい」に変わった気がした。
いくつかの果物を抱えながら、少女と歩きはじめる。
青空のキャンバスに少女の綺麗な黒髪がフェードインする。
思わず見蕩れながら、少女と楽しくお話をする。
そうだ…とりあえずつぶやいておこう…。

「綺麗な黒髪の少女に出会った…なう」


☆アイキャッチ


★黒背景

[後輩]すみません、この書類って…
[鈴夏]その書類はねぇ…って、これじゃあダメだよぉ~~ やりなおしぃ~~」
[後輩]えーっ…まじっすかー
[鈴夏]ほらほら、グチってないで…仕事しご…
[同僚]鈴夏ー、内線の2番にお電話だよー
[鈴夏]はい了解~内線の2番ね………おまたせしました~商事です

★白背景に変化

[鈴夏]その案件につ……
[クロ]あんけん?

★(バスの中な写真)

[クロ]そろそろ着くので……起こしちゃいました…ごめんなさい
[鈴夏]ううん、こちらこそ寝ちゃってごめんね…
[クロ]なんだか……大変そうなお仕事なんですね…
[鈴夏]えっ…なんか…寝言でも言ってた…?
[クロ]ダメ~…やりなおしぃ~~って……言ってました
[鈴夏]あちゃぁ…そんな寝言言っちゃってたかぁ…

そうこう言っているうちにバスが止まる。

[クロ]あ、ここのバス停です
[鈴夏]あ、じゃあ…降りますか~

★(コテージの写真)

寝ぼけながら、まずは時計を確認する……1時間くらい経過していた。
元々乗っている数が少なかったバスのお客さんも…もう誰もいない。
640円という金額をそれぞれバスの運転手さんに支払い、バスを降りる。

バスを降りた目の前には茶色の大きなコテージが建っていた。
それほど新しくない…どちらかというとちょっと古めのコテージ。
でも、私の趣味にピッタリなコテージで…ここに泊まってみたい…そんな気分になった。
庭が綺麗にされているところを見ると…ちゃんとした管理人さんがいるんだろうから…高いかな…。

[鈴夏]あはは…すごい所に住んでるんだねー
[クロ]えと、あの…こんな遠くまで…すみません
[鈴夏]気にしないで~♪ 先ずは、この果物を家に置こうか?
[クロ]そうですね……じゃあ、裏庭の方から…

そういって、私達はコテージに向かった。
コテージに向かう途中…バスが視界にはいる。
乗ってきたバスはくるっと方向転換して戻ってきたみたいだ…。
ああ、そういえば終点ってさっき言ってたっけ…じゃあ、ここから引き返すんだろう。
多分、このバス一台だけの運行だろうから…また往復して戻ってくるのは2時間後かな…?

コテージの裏庭に到着した私達はウッドデッキになっている場所に果物を下ろす。

[クロ]あの…ありがとうございました
[鈴夏]どういたしまして~♪ それにこんな素敵なコテージに出会えるなんて…素敵な出会いだよ~
[クロ]このコテージ…気に入っていただけました?
[鈴夏]うんうん! このウッドデッキといい、木の温もりが伝わってくるって言うか…もう最高だよ~
[クロ]……あ、ありがとうございます
[鈴夏]私もこういうところに泊まってみたいと思ってたんだ~
[クロ]……
[鈴夏]でも、これだけ立派だと…さすがに私一人だと高くて泊まれないかな~
[クロ]あ、それなら…今日……泊まっていきませんか?
[鈴夏]え、だってクロちゃん達が…ここに泊まってるんじゃないの?
[クロ]いいえ、今日は誰も…宿泊の予定はありません…
[鈴夏]いやいや…私もそんなに手持ちがあるわけじゃないし…次のバスで戻ろうかな~って思ってて…
[クロ]あ…ごめんなさい……実は…今日のバス…あれが最後なんです
[鈴夏]え? だってまだ15時だよ…?
[クロ]実は…あれが最終便で……
[鈴夏]あちゃぁ…そうなんだ…
[クロ]だから…一緒に…ここに泊まりませんか?
[鈴夏]あ、でも…そんなに財布の余裕は無いんだよね~
[クロ]大丈夫ですよ…タダで大丈夫です
[鈴夏]いやいや、クロちゃんに全額出させるわけにもいかないし…
[クロ]私も…タダだから…大丈夫ですよ?
[鈴夏]えっ…そんなわけにはいかないでしょ~ それじゃあ管理人さんが…
[クロ]大丈夫なんです…

★白背景に変化

だって…私が…ここの管理人ですから

その後、私は辛うじて入る電波をつかってつぶやいた。
「夏色の少女が…なんか、もう…とにかくすごい……なう」

☆エンドセクション (1章終了)

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