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何色にも、染まらない ~It doesn't dye even to the color. ~

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何色にも、染まらない 最新版原稿

■ S U M M E R ■

☆3 一日だけのコテージオーナー

「@Maki.K えー?! じゃあ、その女の子が管理人やってるペンションってもう…」
「@Rai.M うん。 もうまもなく最後なんだって…きっとすごく傷つけちゃったよね…」
「@Maki.K まあ、事情を知らなかったんだし…しょうがないでしょ」
「@Rai.M でもでも…泣かせちゃったのは事実だし…」
「@Maki.K まあ、それならお詫びにあの子の…して欲しいことをしてあげれば?」
「@Rai.M …して欲しいこと?」
「@Maki.K せっかくだし、して欲しいことを聞いてみれば?」
「@Rai.M そっか…そうだね…何かして欲しいことがないか…聞いてみる!」
「@Maki.K ううん、そういえばそっちのほうは果物が美味しいらしいけど…堪能した?」
「@Rai.M …そうなんだ…知らなかった…」
「@Maki.K 泊まると、すっごく美味しいタルトをご馳走してくれる所もあるそうだよ~」
「@Rai.M タルトかぁ…それは食べてみたいなぁ……」
「@Maki.K でも、ちょっと前からそういうサービスがなくなったって…つぶやいてる人いたね~」
「@Rai.M あれ…そうなんだ」
「@Maki.K うん、なんでも高齢になったから隠居しちゃったんだって」

……

台所で夕食の片付けをしているエプロン姿のクロちゃんを発見。
一瞬、失敗してしまいそうな嫌な予感がして思い止まってしまいそうになる。
でも、ここで何も出来ないのは嫌だ…から…私は勇気を振り絞ってクロちゃんに話しかける。

[クロ]あっ…鈴夏さん……えっと…
[鈴夏]うん、さっきは…なんだかごめんね空気読めない…お姉さんで
[クロ]そんな…私こそいきなり泣いちゃってごめんなさい…
[鈴夏]謝らないで……だって、私だってきっと泣いちゃう…最後だなんて悲しすぎるよね…
[クロ]……はい、すっごく悲しいです
[鈴夏]それで…それでね……私に何かして欲しいことってないかな?
[クロ]…えっと…鈴夏さんにして欲しいことですか…?
[鈴夏]うん、何でも出来るわけじゃないけど…私に出来ることがあれば…何でも言ってね
[クロ]……うーん……えっと……

ぷるるるる…
ぷるるるる…

[クロ]……電話? すみません…ちょっと電話に出てきます……

そういって、クロちゃんは慌てて台所の壁に設置された電話の受話器を取る。

[クロ]はい、もしもし……はい、はい、そうです………

私は台所を眺めながら何か出来ることは無いか探してみる。
……綺麗に整った台所で、特にお手伝いできることは…なさそう……
私はしょんぼりしながら、カタカタと打ち込む。

「何気にお役に立てそうなことが…みつからない……なう。」

[クロ]あの…鈴夏さん……
ふと隣を見ると、困った表情をしたクロちゃんが隣にいた。

[鈴夏]ああ、ぼーっとしちゃって…ごめん
[クロ]それで……その、実は困ったことになって……
[鈴夏]うん、どうしたの?
[クロ]今からお客様がくることになったんです。。。
[鈴夏]お客様? って、もう夜の8時だよ?
[クロ]はい…泊まろうと思っていたホテルの予約がうまくできていなかったみたいで…
[クロ]それで、すこし人数が多くて…鈴夏さんにお貸しできる客間が………
[鈴夏]……
[クロ]その…申し訳ないんですが……私と同じ管理人の部屋で今日は………
[鈴夏]……天啓だね…これは間違いなく天啓だよ!!
[クロ]えっ…?
[鈴夏]さっきの話に戻るけどさ…私に出来ること…今ならあるんじゃない?
[クロ]…あっ……で、でも……
[鈴夏]ううん、きっとそういう運命だったんだよ!だから…きっとこれは天啓なんだよ!
[クロ]その……けっこう大変……ですよ?
[鈴夏]覚悟は出来てるよ! バッチこい!
[クロ]じゃあ……このコテージの最後のお客様を…一緒におもてなしして頂けますか?
[鈴夏]うん! ……じゃなかった…! はい!管理人さん!
[クロ]……あの……もしよければ……お手伝いさんじゃなくて……
[鈴夏]え、違うの?
[クロ]……私の…一日だけの…オーナーさんになってください

オーナーという甘い響きに…すこしだけときめいてしまったのは…しょうがないよね…?

「…びっくりする出来事が起こりました……私……オーナーになります! なう!」

★アイキャッチ

[鈴夏]ようこそ……いらっしゃい……ませ
[クロ]長旅お疲れ様でした…どうぞ中へ

そういってクロちゃんは全8名のお客様を部屋に案内し始める。
私はクロちゃんの部屋…、管理人のお部屋にいったん帰還。

★管理人部屋

[鈴夏]ふはぁあ……疲れた………すごいな…クロちゃん……

あの電話の後、残り1時間という短い時間で準備をした。
部屋の片付けから、廊下等の清掃、おもてなしをする心ばかりの料理の準備。
クロちゃんの作業にはムダが無く、テキパキと仕事をこなす。
それまでのおっとりとしたクロちゃんのイメージとは裏腹で、仕事になると別人のようだった。

「@Rai.M は、はふぅ…とりあえず、いったん休憩~……なう」
「@Maki.K あらら、一日オーナーさんはもうギブアップ?」
「@Rai.M そ、そんなことないもん! まだまだこれからだよっ…!なう!」
「@Maki.K その意気、その意気。せっかくの機会なんだし…がんばらないとね」
「@Rai.M それにしても、客商売って本当に大変なんだね~…って再実感なう」
「@Maki.K デスクワークばかりだもんねぇ…こっちの仕事は。」
「@Rai.M うん、実感しまくりだよ……今日は体をたくさん動かしたからすぐにばたんキュー…だね」

ガチャ……
お客さんの部屋からクロちゃんが戻ってきた。

[クロ]あの……だいじょうぶですか?
[鈴夏]うんうん、全然大丈夫だよ~ それにしても…いきなりだからビックリしたね~
[クロ]はい…もうお客さんは来ないんじゃないかと諦めていましたから…ホントにビックリです
[鈴夏]あれ…もうお客さんの予定って…ないの?
[クロ]その……鈴夏さんが最後のお客さんになっちゃうと思ってました…
[クロ]それに…明後日くらいには私も京都に帰ろうと思っていたので
[鈴夏]そっか…それじゃあ……最後だから最高のおもてなしをしないとね!
[クロ]頑張らないと…です……
[鈴夏]えっと…次はどんなことをするの?
[クロ]いえ、もう特にはありません…明日の下ごしらえをするくらいで……あっ……
[鈴夏]ん…? どうしたの?
[クロ]えっと…明日の準備で……手伝っていただきたいことがあるんですが…いいですか?
[鈴夏]うんうん、なんでも手伝うよ~~

……

★台所

台所に到着後、手を念入りに洗いエプロン姿に変身した私を待っていたのは……
出会った日にクロちゃんが必死に運んでいた果物たちだった。

[鈴夏]下ごしらえって…これ?
[クロ]はい、今日のうちに果物を食べやすい大きさに切って味付けをしたいので
[鈴夏]うわぁ…これ全部使って…何を作るの?
[クロ]えっと…それは……秘密…です……
[鈴夏]むぅー秘密なのか~~ 明日になってからのお楽しみかな
[クロ]です…あっ…でも、期待とか…しないでくださいね…? 上手に作れるか…わからないので…
[鈴夏]うんうん、りょーかいっ! じゃあ、さっそく果物をじゃんじゃん剥いちゃいますかっ!
[クロ]はいっ!

……

[鈴夏]よっと……こっちはこれで全部終わった…かな?
[クロ]私も、このリンゴで…最後です……
[鈴夏]それにしても、これだけの果物の山があると壮観だね~♪
[クロ]あはは…せっかくなので大奮発してみました…
[鈴夏]それじゃあ……せっかくなのでっ……

私はさっそくスマートフォンを取り出し、カメラで撮影する。
[鈴夏]そんでもって…つぶやきをカキカキっと…!

「黒髪の少女と、果物フェスティバル! ……なう!」

[鈴夏]よっし…つぶやき完了~♪
[クロ]わぁ…こんな風に表示されるんですね

いつの間にか、クロちゃんが隣からスマートフォンの画面を覗き込んでくる。
私はクロちゃんが見やすいようにスマートフォンの画面を向ける。

[鈴夏]うん、綺麗に撮れてるでしょ~♪
[クロ]このつぶやきって…ずっと残るんですか?
[鈴夏]そうだね~ 私が消さない限りは残るよ~♪
[クロ]じゃあ、私も…見ることができるんですか?
[鈴夏]もっちろんっ! ちょっと携帯電話を貸して~

私はクロちゃんの携帯電話で自分のつぶやきのページを開く。
[鈴夏]はいっ! 私のつぶやきがここから確認できるのでーす♪
[クロ]わぁ…私の携帯電話でも…見ることが出来るんですね
[鈴夏]そうなんだよ~ネットワークの力は偉大なのですっ
[クロ]じゃあ、私以外の人も鈴夏さんのつぶやきを見ているかもしれないんですね
[鈴夏]そうだよ~ まあ、見てくれるのは…ほとんど私の知り合いだけどね~
[鈴夏]あっ…って言ってたら、さっそく私の知り合いからお返事が来たよ~

「@Maki.K こんな時間にそんなに果物を食べると…太っちゃうぞぉ~?」
「@Rai.M これは食べるようじゃないのですっ! 明日に向けて下ごしらえ中なのです……なう」
「@Maki.K 下ごしらえってことは…明日何か作るの?」
「@Rai.M そうなんだよ~ でも、何を作るかは明日のお楽しみなのでーす♪ ……なう」
「@Maki.K あはは…じゃあ、明日のつぶやきも楽しみにしてるわね」

[クロ]なんだか普通に会話も出来るんですね~
[鈴夏]うん、そうなんだよ~♪ でも、いろんな人に見られちゃうからすごい会話は出来ないけど…
[クロ]えっ…すごい…会話……?
[鈴夏]あはは、そうだよ~♪ 大人になると…すごい会話が始まっちゃったりするんだぞぉ~?
[クロ]……どっ…どんな……内容だったり…するんですか?
[鈴夏]おぉ~ クロちゃんも興味津々なお年頃なんだね?
[クロ]いえっ…その……
[鈴夏]もう、真っ赤になっちゃって~♪
[クロ]まっ…真っ赤になんて…なってませんっ……
[鈴夏]あははっ、すごい真っ赤だよ~ っと、もうこんな時間だね…そろそろ私たちも寝ようか?
[クロ]あっ…そうですね じゃあ、お風呂沸かしてきますね
[鈴夏]うんうん。

……

★お風呂場

わしゃわしゃ……

[鈴夏]どこかかゆい所はありませんか…お嬢様?
[クロ]お、お嬢様って……なんだか恥ずかしいです…

わしゃわしゃ……

[鈴夏]おやおや…このくらいで恥ずかしがっているようじゃ、すごい会話はまだまだ先ですね♪
[クロ]えっ、どうしてですか?

わしゃわしゃわしゃわしゃ……

[鈴夏]それはもう…きっとクロちゃんなら…恥ずかしさで気絶しちゃうから…だよ~♪
[クロ]そっ…そんなにですか…!

わしゃ…

[鈴夏]そうなんですよ~? えっと、流すので…ちょっと目を瞑ってくださいね~?
[クロ]はっ…はいっ……

ばしゃーっ

[鈴夏]だいじょうぶ?
[クロ]はいっ…なんとかっ
[鈴夏]うんうん、綺麗なキューティクルふっかーつっ♪
[鈴夏]いいなぁ…私も昔みたいに髪を伸ばそうかなぁ…?
[クロ]…昔って…髪を伸ばしてたんですか?
[鈴夏]うん、そうだよ~……クロちゃん程は長くないけど、ちょっと長めにしてたかなぁ…?
[クロ]えっと…その…どうして切っちゃったんですか?
[鈴夏]それは…まあ……色々あったんだよ~?
[クロ]…色々ですか?
[鈴夏]んー? 聞きたいの~?
[クロ]…私も…髪を切ろうかなぁ…って思ってるので……
[鈴夏]そっかぁ…確かにちょっと躊躇しちゃうよね……私も失恋してなければ切ってなかった…もんなぁ…
[クロ]……失恋したんですか?
[鈴夏]…あちゃ。 口が滑っちゃった……
[クロ]す、すみません………そういうつもりじゃ……
[鈴夏]まあ、色々とあったんだよ~……私も若かったからなぁ…
[クロ]……いろいろ……
[鈴夏]…もしかして、色々と想像しちゃってるのかな…?
[クロ]えっと…その…
[鈴夏]もう、しょうがないなぁ…せっかくだし大人の会話をしちゃいますか~♪
[クロ]おっ…大人の会話ですか?
[鈴夏]そだよ~~ 覚悟してね~?
[クロ]……(ごくり)
[鈴夏]まずね…その彼と温泉に行ったときなんだけどね…
[クロ]……温泉に…二人でいったんですか?
[鈴夏]そうだよ~♪ 一緒にお風呂に入ったりしたのだっ…!
[クロ]えぇええええええ!? そっ…そんな…一緒に……
[鈴夏]それでねぇ…こんな事されたりしたのだっ!
[クロ]わわわっ…! だめ、だめです!
クロちゃんはビックリして、一気に遠くへ逃げ出してしまう

[鈴夏]ごめんごめん…冗談だって~ ほんとにしたりしないから~
[クロ]ほんとに…ですか?
[鈴夏]うんうん、ほんとほんと~

この後、クロちゃんがのぼせてしまうほどクロちゃんと大人な会話をしました。
…ほんとに会話しただけですよ?

……

★管理人部屋

「お風呂上りの牛乳がとってもおいしいのですっ! ……なう」

[鈴夏]ぷはぁ…やっぱりお風呂上りの一杯は最高だね~♪
[クロ]すごく美味しいですよね…私もお風呂の後は牛乳飲みます…
[鈴夏]うんうん、オーナーはよき理解者がいて嬉しいです
[鈴夏]…って、そういえば…どうして私がオーナーなの?
[クロ]えっと…本当はちゃんとしたオーナーがいるんですが…ちょっと…外出してて…
[鈴夏]あぁ…そうだよね…未成年だし、クロちゃんだけだと色んなところから怒られちゃうか…
[クロ]はい…それにお客様が未成年だけだと不安になると思うので…
[鈴夏]そうだね~ 確かに~
[クロ]だから…鈴夏さんがいなかったら……
[鈴夏]…私もお役に立てて光栄だよ~♪
[クロ]その…来てくれてありがとうございます…一人だったら…何も出来なかったかもしれないです…
[鈴夏]そういえば…オーナーさんって…どういう人なの?
[クロ]……えっと…私のおばあちゃんです……
[鈴夏]へぇ~そうなんだ~
[クロ]もう年齢も年齢なので、隠居するって言ってて
[鈴夏]むぅ…そうなんだ……
[クロ]あっ…その…明日も早いので…そろそろ寝ますか?
[鈴夏]そうだね、じゃあ…
[クロ]あっ…ベット使ってください…私はここのソファーで…って…えっ……ええええっ!?
私はソファーに向かうクロちゃんの腕を掴み、ベッドに連れ込んだ
[鈴夏]そんなことをいう子は…私がベッドの中でお仕置きなのですっ!
[クロ]わわっ…そ、そんな……だって、二人で寝たら暑くて……
[鈴夏]だーめっ、オーナー命令なのですっ!
[クロ]えぇぇ!?
[鈴夏]せっかくだし、これも思い出でしょ? 観念しなさいっ!
[クロ]は…はい……えっと…じゃあ、失礼します。。。
[鈴夏]うんうん、お姉さんは素直な子が大好きです♪

「黒髪の少女と一つの布団でベッドイン……なう」

[クロ]わわわ!なんかすごい事をつぶやいてませんか!?
[鈴夏]まだまだ、これからがすごい…ことに…

「@Maki.K こらこら…おいたが過ぎると…通報しちゃうぞ?」

[鈴夏]……なると、通報されちゃうらしいから程ほどに……

「@Rai.M おいたはしませんっ…ぱじゃまパーティ開催するだけです……なう」
「@Maki.K はいはい、通報、通報っと……」
「@Rai.M みぎゃあああ!!! そ、それだけはだめ~……なう」
「@Maki.K はいはい、程ほどにね…明日も頑張らないといけないんでしょ? 早く寝なさーいっ!」

[鈴夏]ふぅ……怒られちゃったし…早く寝ますか…
[クロ]はい…その…明日も…よろしくお願いします……オーナー……
[鈴夏]こちらこそ…可愛い管理人さんっ!

「というわけで、明日のために寝るのです…なうっ…!」

☆アイキャッチ

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