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何色にも、染まらない ~It doesn't dye even to the color. ~

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何色にも、染まらない ボツ原稿おきば。なーむー。

■ S U M M E R ■

☆1章 出会い

大都会のコンクリートジャングルから見える風景に飽きてしまった。
灰色のコンクリート、褐色の切れかけた電球、夜に煌々と輝くネオン。
見慣れないうちは珍しさもあって、それほど嫌ってなかった風景だった。
でも、慣れてしまえば…
その内側が見えてしまえば…
普段の風景が嫌いなものに変わるまで、それほど時間はかからなかった。

「新しい風景を見に行こう」
そう思い立ったのはつい先週。
使う機会がないはずなのに一行に貯まらない…僅かな貯金をカメラに変え、
旅行という名の新しい風景探しに出かけた。

★(列車から見える風景の風景写真1:都会風味)
季節は夏。
特に計画も無かったので、適当に列車に乗りついで風景を楽しむことにした。
初めはそれなりにビルで覆われた風景が続いた。
やがて、コンクリートジャングルは徐々になくなっていき

★(列車から見える風景の風景写真2:田舎風味)
いつもまにか民家が少しあるだけの田舎風景になった。
数年間におよぶ都会暮らしが続いたためか、その風景がとても珍しく見えた。

「ここで降りよう」
思い立ったら即実行。
それなりの交通費を駅員に支払い、僕は小さな駅に降り立った。
名前も知らない駅。見たことも無い風景。知る人が一人もいない世界。

「ちょっとした冒険……かな」
なんて、ちょっと浮かれていると……

「わぁああっ!」
という悲鳴が聞こえた。
反射的に振り向く。

★(駅前に佇む少女(果物の描写は無くてもOK))
悲鳴が聞こえた方向には目の前の光景に呆然とした少女が立っていた。
そして、完全に沈黙した少女の目の先にはたくさんの果物が転がっている。
少女の手には破けたビニール袋。
どうやら、ビニール袋に詰め過ぎて破けてしまったようだ。

「あの…大丈夫?」
僕が屈みながら話しかけると、その少女はやっと状況が把握できたのか
「…拾わないと」
と言いながら、慌てて自分が落としてしまった果物を拾い始めた。
かなり広範囲に散らばってしまった果物を集めて、僕は少女に渡そうとする。
が、少女の腕の中にもたくさんの果物。受け取ってもらうのは難しそうだ。

「えっと…代わりの袋とか…持ってる?」
「……(ふるふる)」
首を横に振っている。
どうやら、スペアは持っていないらしい。
「じゃあ、代わりになるようなものは…」
「……(ふるふる)」
「あはは…だよね…」
手ぶらで買い物に来た少女の様子を見れば…納得だ。
「じゃあ、届けてあげるよ」
「……(かくん)」
首を横に傾ける
「キミの家まで届けてあげるってことだよ」
「……」
今度は微動だにしない。ちょっと迷っているみたいだ。
表情はほとんど変わらないような気がするけど…目でそう言ってるみたいだ。
「えと、別に迷惑でもなんでもないから」
「……あの…えっと…」
「まあ、これも何かの縁だと思ってさ…気にしないでよ」
「……ありがとう…ございます」
「……いいえ、どういたしまして」

★黒へフェードアウト
その少女の表情が「困った、どうしよう」から「うれしい」に変わった気がした。

☆アイキャッチ

★(田舎の風景 家と小川がある写真)

「あの、終点…です…目的地に着きました」
「…ん、ああ、ごめんよ…寝ちゃってた」
寝ぼけながらも時計を確認する。1時間くらい経過していた。
次に目を擦りつつ、外の風景を眺めると…見事なくらいに何も無い、牧場の様な風景が広がっていた。

乗ってきたバスはくるっと方向転換して再びここに戻ってくる。
ああ、そういえば終点ってさっき言ってたっけ…じゃあ、ここから引き返すんだろう。

「あの…えっと…」
「さぁ、キミの家まではあとどのくらい?」
「……」
「あれ、まだ結構遠いの?」
「…あ、あの丘の上です」

彼女が見ている先、丘の上に大きな家があった。

「あはは…すごい所に住んでるんだねー」
「えと、あの…こんな遠くまで…すみません」
「いいよ、いいよ、気にしないで」

★(家の写真)

その少女の家に到着した僕は丁寧に果物を渡した。
ちょっと日本風じゃない感じの…コテージに似ていた。
「さって…それじゃあ戻ろうかな」
「えっ…戻るんですか?」
「うん、そろそろ今日の宿も見つけないといけないしね…」
「…ご、ごめんなさい…その…」
「えっ…どうしたの?」
「実は…最後だったんです」
「最後…?」
「駅に向かうバスは…」
「えっ…そうなんだ…」

★(黒へフェードアウト)
さて、さすがに困ったことになった。
バスで1時間もかかるとするなら…歩くと途方も無い時間がかかりそうだ。
信号が無かった事と、それなりのスピードを出していたような気がするから…

★(佇む少女(背景なし、背風景はホワイトで))
「あの、もしよければ…というか…ぜひ…泊まっていってください」
「……」
「まあ、これも何かの縁だと思って…遠慮なさらずに…」
1時間前に言った台詞を返されてしまった。
僕はひとつため息をついて…返事をした。
「そう…じゃあ、お願いしてもいいかな?」
「はいっ」

こうして、僕はその少女の家に泊まることになった。
その滞在期間がまさか2週間になると…まったく予想できなかった。

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